AI導入で最初にぶつかる壁は「何から手をつければいいか分からない」です。答えは、業務を3つの軸でスコアリングして点数が高い順に試すことです。勘で選ぶより早く効果が出て、失敗したときの傷も小さくなります。
導入を支援する専門家への相談窓口は記事の後半でも触れますが、まずスコアリングの考え方を理解しておくと、相談する際に話が具体的になります。
スコアリングに使う3つの軸
AIが得意なのは「同じパターンの作業を速く正確にこなすこと」です。逆に、状況を読んで例外を判断する作業は今でも人間が担います。この特性から、次の3軸でスコアをつけます。
繰り返し頻度:同じ作業が週に何回起きるか。毎日ある作業と年1回の作業では、AIが代わりに動いたときの恩恵が桁違いです。
判断の難易度:作業の中に「経験や文脈をもとに考える判断」がどれくらい入っているか。マニュアル化できる作業ほどAIに任せやすく、担当者の裁量が大きい作業ほど向きません。
時間コスト:1回あたりどれくらいの時間がかかっているか。時間がかかっていても頻度が低ければ優先度は上がりにくいので、「月あたりの合計時間」で考えると比べやすくなります。
それぞれを1〜5点で評価して合計点を出します。15点満点で12点以上の業務が、最初に試す候補になります。
ChatGPTを使ってスコアリング表を作る手順
このスコアリングは、ChatGPT(テキストで質問に答えてくれる対話型AI)を使って自分の会社の業務に当てはめることができます。以下の手順で進めてください。
用意するもの
– ChatGPTのアカウント(無料プランで可)
– 自社の業務リスト(思いつく限りでよい)
手順
- ChatGPTに次のように入力します。
「私は従業員○人の○○業の会社で働いています。以下の業務を『繰り返し頻度(週あたり回数)』『判断の難易度(1=マニュアル通り、5=経験がないとできない)』『月あたりの時間コスト(時間)』の3軸で1〜5点のスコア表にまとめてください。業務リスト:[請求書の入力、見積書の作成、問い合わせメールへの返信、在庫の確認、週次報告書の作成……]」
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ChatGPTがスコア表を出してきたら、「合計点が高い順に並べ直して、AIに任せやすい理由も1行で書いてください」と続けます。
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上位3件が出てきたら、それを叩き台に自分で確認します。スコアはあくまで出発点です。「この業務は外注先との調整が必要」「うちの社員しか知らないルールがある」という事情は社内の人間しか分かりません。ChatGPTの出力に補足メモを加えて完成させてください。
この作業自体は1〜2時間で終わります。ゼロから表を作るより格段に速く、抜け漏れも出にくくなります。
優先順位が高くなりやすい業務の傾向
業種を問わず、スコアが上位に来やすい業務には共通した特徴があります。
- 定型文の入力・転記:伝票入力、受注データの転記、社内向けの定型メール
- 情報の要約・整理:議事録作成、アンケートの集計コメント、社内報告書のまとめ
- 検索・調査の下準備:仕入れ先の候補リストアップ、補助金制度の一次調査
一方、スコアが高くても「まだAIに任せにくい」業務もあります。取引先との交渉、クレーム対応の判断、人事考課などは判断の難易度が高く、現時点では補助的に使うにとどめる方が安全です。
最初の1業務を3週間で試す
スコアリングで候補が絞れたら、1番点数が高い業務だけを選んで3週間試します。複数同時に動かすのは後回しです。
従業員35人の食品卸の会社で、経理担当2人が毎月末に仕入れ先ごとの請求書データを会計ソフトに転記する作業(月あたり約20時間)を抱えていた場合、この業務はスコアが高くなりやすい典型です。まず請求書の内容をChatGPTに読み取らせて転記用のCSV形式に整える作業だけをAIに任せ、「確認・修正・取り込み」は引き続き担当者が行う、という分担から始めます。
3週間で確認するのは次の2点だけです。
- ミスが増えていないか(精度)
- 担当者の負担は実際に減ったか(時短)
この2点が問題なければ次の業務に広げます。どちらかに問題があれば、その業務のAI活用は一旦止めて次候補に移るか、やり方を変えます。3週間という期間は、月次で動く業務なら1サイクル完結できる最短の区切りです。
導入ツールの選定や社内ルールの整備をどう進めるか迷う場合は、社内向けのAI研修や導入支援を提供する機関に相談する方法もあります。生成AI研修の費用と助成金については、中小企業が使える制度の相場をまとめた記事で確認できます。
注意点:スコアが高くても後回しにすべき場合
点数が高い業務でも、次の条件に当てはまる場合は優先順位を下げてください。
- 個人情報や機密情報を大量に扱う業務(セキュリティの設定確認が先決)
- 社外システムと連携が必要で、改修コストが発生する業務
- 担当者1人しかやり方を知らない業務(まずマニュアル化が必要)
最初の1業務は「点数が高い」かつ「社内だけで完結する」かつ「失敗してもすぐやり直せる」の3つが重なるものを選ぶと、最初の3週間を安全に動かせます。
判断に迷う場合の相談先
スコアリングをやってみたが「自社の業務がどれに当てはまるか分からない」「候補が出たが具体的なツール選定で止まった」という場合は、AI導入の支援を専門にしている中小企業診断士やITコーディネーターに相談するのが近道です。商工会議所・よろず支援拠点・都道府県の産業支援機関では無料または低コストの相談窓口を設けているところが多くあります。
当メディアでもAI導入・社内研修に関する相談を受け付けています。どの業務から始めるかを一緒に整理したい場合は、お気軽にご連絡ください。


