Teams録音の「同意」、社内だけの話ではなくなった

Microsoft Teams(チームコミュニケーションと通話録音・文字起こしをまとめて行えるビジネスツール)が、外線電話を使った1対1の通話にも「明示的な同意確認」を適用できるようになります。これまでは社内メンバー同士のTeams通話や会議が対象だったこの機能が、PSTN(公衆電話回線、つまり一般の固定電話や携帯電話)を通じてかかってくる顧客・取引先との通話にも広がるという変更です。
Teamsで通話録音や文字起こしを業務に使っている会社にとっては、対応が必要になる可能性があります。この記事では、今回の変更の内容と、自社ルールで確認しておくべき点を整理します。
何が変わるのか──機能の中身を整理する
今回追加されるのは、外線電話(PSTN)を使った1対1のTeams通話において、録音や文字起こしを開始したときに相手側へ音声案内が流れ、電話のキーパッドで同意・拒否を選択できる仕組みです。
具体的には次のような流れになります。録音または文字起こしを開始すると、電話の相手方(顧客や取引先)に「この通話は録音・文字起こしされます。同意する場合は1を、拒否する場合は2を押してください」のような音声案内が自動的に流れます。相手が拒否を選んだ場合、通話から切断されるのではなく、ミュート状態で通話に残ることができます。つまり、拒否した相手の声は録音・文字起こしに含まれない状態で、通話自体は継続できる設計です。
この仕組みは、すでに Teams の通話ポリシーに存在していた「明示的な同意」機能をPSTN通話に拡張したものです。社内のTeams同士の通話では先行して使えていた機能が、外部の一般電話回線からの通話にも対応する形になります。
「同意を取っているつもり」が通用しなくなる場面
中小企業の営業・管理部門を中心に、Teamsの録音・文字起こし機能をどのように使っているかを考えると、現時点でも同意取得の実態にはかなりばらつきがあると思われます。
実際のところ、電話商談や顧客対応の場面で録音・文字起こしを使っている会社に「顧客への同意取得をどうやっているか」と聞くと、「録音開始前に口頭で伝えている」「会話の最初に『録音させてください』と言っている」という対応が多い一方、「自動文字起こしは録音とは違うと思っていた」「特に何も言っていなかった」という声も珍しくありません。
今回の機能変更は、管理者が「明示的な同意を必須とする」ポリシーを有効にした場合に、システム側が自動で相手に確認を取る仕組みです。逆に言えば、管理者がこのポリシーを有効にしていない状態では、従来と変わらず同意確認なしで録音・文字起こしを開始することも技術的には可能なままです。ただし、それが社内ルール・法令上で問題ないかどうかは別の話になります。
日本では通話録音に関する法律として、不正競争防止法や個人情報保護法が関連する場面がありますが、通話録音そのものを禁止する直接的な規定はありません。とはいえ、顧客との関係で「録音していた」という事実が後から問題になるリスクや、業種によっては金融商品取引業などで録音義務と記録保管義務が課されているケースもあります。「法的にギリギリ問題ない」より、「相手が安心できる形で同意を取っている」を目指す企業が増えている背景には、こうした背景があります。
自社の運用と照らして確認したい3点
今回の変更を受けて、Teams通話録音・文字起こしを業務で使っている(あるいは今後使いたいと考えている)会社が確認しておくとよいのは、主に次の3点です。
ひとつ目は、現在の録音・文字起こしの対象が「内線(Teams同士)」か「外線(PSTN)」かの区別ができているか、という点です。社内の打ち合わせ録音と、顧客への電話対応の録音では、同意取得のリスクプロファイルがまったく異なります。にもかかわらず、同じTeamsの機能として一括りに運用しているケースは多く、ここを区別できていない会社は今回の変更を機に整理する価値があります。
ふたつ目は、Teams管理センター上で「明示的な同意」ポリシーが有効になっているかを確認することです。Microsoft 365のBusinessまたはEnterpriseプランでTeamsを使っている場合、管理者はTeams管理センターから通話ポリシーの設定を確認できます。このポリシーが無効のままだと、今回の機能が追加されても同意確認は自動では行われません。「機能が追加されたから大丈夫」ではなく、ポリシーを有効にして初めて機能が働く点は注意が必要です。
三つ目は、同意確認フローを取り入れた場合、顧客・取引先の反応への対応を担当者に周知できているか、という運用面の準備です。「急に音声案内が流れてきた」と顧客が戸惑うケースを減らすためにも、通話の冒頭で「今日の商談は録音・文字起こしをする場合があります」と一言添える習慣を社内で統一しておくと、機械的な同意確認と人的な配慮の両立ができます。
「使っていない会社」が今確認すること
Teamsを導入しているものの、録音・文字起こし機能をまだ使っていない会社にとっても、この変更は「使い始めるタイミング」を考えるきっかけになります。
営業担当3人のチームで、顧客からの問い合わせ対応電話を毎日10件以上受けているような状況では、通話の文字起こしを自動で残せるだけで、後から「何を約束したか」「クレームの経緯がどうだったか」を確認する手間が大きく変わります。文字起こしされたテキストをChatGPTなどに貼り付けて要点を整理する使い方(プロンプトの書き方ガイドで紹介している手順がそのまま応用できます)も、実務ではよく使われる流れです。
Teamsの録音・文字起こし機能は、Microsoft 365 Business BasicプランやBusiness Standardプランに含まれており、追加費用なしで利用できる場合がほとんどです。ただし、文字起こしの精度や言語対応、保存先(SharePointやOneDrive)の容量設定は契約プランによって異なるため、社内のIT担当者またはMicrosoft 365の販売パートナーに確認するのが確実です。
ポリシー有効化の前後で何が変わるか
下表は、Teams管理者が「明示的な同意」ポリシーを有効にした場合と、していない場合での動作の違いをまとめたものです。
| 状況 | ポリシー無効(現状デフォルト) | ポリシー有効 |
|---|---|---|
| Teams同士の内線通話で録音開始 | 通知のみ(同意確認なし) | 参加者に同意確認 |
| PSTN(外線電話)の1対1通話で録音開始 | 通知のみ(同意確認なし) | 相手に音声案内→キーパッドで選択 |
| 相手が拒否した場合 | 設定上、拒否の仕組みなし | ミュート状態で通話継続 |
| 管理者の設定場所 | Teams管理センター > 通話ポリシー | 同左 |
ポリシーを有効にするかどうかは、会社の方針と顧客対応のスタイルによって判断が分かれます。法令上の同意義務が明確な業種(金融・保険・医療など)や、顧客との信頼関係を重視する営業スタイルの会社では有効化を検討する価値があります。一方、社内研修や内部会議の録音が主な用途で、外線通話の録音はほとんど行わない場合は、まず内線側の運用を固める方が優先度は高くなります。
まとめ
Teamsのこの変更は、「システムが同意確認を自動でやってくれる」便利さを提供するものですが、それを使うかどうかの判断、そして社内の運用ルールをどう整えるかは、あくまで会社側に委ねられています。録音・文字起こしをすでに使っている会社は、PSTN通話と内線通話の区別ができているか、ポリシーが意図通りに設定されているかを確認する良いタイミングです。まだ使っていない会社にとっては、同意確認の仕組みが整ったことで、顧客対応への導入ハードルが下がったとも言えます。
Teamsの通話ポリシー設定や、顧客対応での文字起こし活用ルールの整え方について社内だけでは判断が難しい場合は、AI活用・業務改善の観点からご相談いただける窓口も活用してみてください。


