経費精算の手入力がなくなる?Business CentralのAIエージェントがクレジットカード明細を自動取込・自動仕分けに対応

当ページのリンクには広告が含まれています。

月末になるたびに、経理担当者がクレジットカードの利用明細を見ながら1件ずつ経費入力する——そんな光景は、多くの中小企業で今も続いています。Microsoftが提供する業務管理ソフト「Dynamics 365 Business Central」のAIエージェント機能「Expense Agent」が、クレジットカード取引データの自動取込と自動仕分けに対応しました。この記事では、何が変わるのか、自社で試す価値があるかどうかを判断するための材料を整理します。

目次

経費精算の手入力は、実際どれくらいの工数がかかっているか

記事内図解

「経費精算にそこまで時間はかかっていない」と感じている経営者は少なくないかもしれません。ただ、担当者レベルで積み上げると話は変わります。1件あたりの処理時間(レシートや明細の確認・金額入力・勘定科目の選択・承認申請)を5分と仮定した場合、従業員20人の会社で月100件の経費処理が発生するなら、それだけで月約8時間が消えていく計算です。

以下は、会社規模別の経費処理工数の試算です。

従業員規模 月間経費件数(目安) 1件あたり処理時間 月間合計工数 年間合計工数
10人 50件 5分 約4時間 約50時間
30人 150件 5分 約13時間 約150時間
50人 250件 5分 約21時間 約250時間

これは手入力のみの試算であり、入力ミスの修正や差し戻し対応を含めると実態はさらに大きくなります。経理担当者1人がこの作業を抱えていた場合、月の稼働時間の5〜15%が経費処理だけで消費されている計算になります。自動化を検討する際の目安として、まず自社の実態値を把握しておく価値はあります。

Expense Agentとは何か、何が変わったのか

Dynamics 365 Business Centralは、Microsoftが提供するクラウド型のERP(企業の販売・在庫・会計・人事などを一元管理するシステム)で、中小企業向けに設計されています。その中のExpense Agent(エクスペンス・エージェント)は、経費精算の処理を自動化するAI機能です。従来はレシートの読み取り支援などが中心でしたが、今回の更新でクレジットカードの取引データを直接取り込む機能が加わりました。

具体的に何ができるようになったかというと、大きく3点あります。会社が利用しているクレジットカードの取引データをBusiness Centralに読み込み、ウェブとスマートフォンアプリの両方で確認できるようになりました。読み込んだデータをもとに経費申請を自動生成する機能も備わっています。さらに、すでに手動で作成済みの経費申請があれば、取り込んだカード取引との突合(マッチング)も行います。これにより、「取引は起きているのに経費申請が漏れていた」ケースや、「同じ支出を二重に入力していた」ミスを減らせます。

従来の経費精算フローでは、担当者がカード明細を手元で確認しながらシステムに入力し、上長が承認するという手順を踏んでいました。今後は、カードデータが自動でシステムに入ってきた状態から処理をスタートできるため、入力作業そのものが不要になるケースが出てきます。

どんな会社で効果が出やすいか

この機能が特に効果を発揮するのは、社員に法人クレジットカードを配布している会社です。個人カードを立替払いで使っている場合は、会社側でカードデータを取得できないため、今回の自動取込の恩恵を直接受けるのは難しくなります。

従業員30人規模のサービス業で、営業担当全員に法人カードを持たせているような会社を例に考えると、イメージしやすいでしょう。月に交通費・接待費・出張費あわせて150件前後の経費が発生するとして、これまでは担当者が月末に一括で入力していたとします。Expense Agentを使うと、カード利用のたびにデータが蓄積され、月末には自動生成された経費申請の確認・承認だけで処理が完結します。入力ミスや漏れが減り、経理担当者は転記作業ではなく確認と判断に集中できます。

一方、現金払いが中心の業種や、個人立替が主流の会社では、この機能単体で劇的に工数が減るわけではありません。その場合は、レシートの画像読み取り機能など別のアプローチを組み合わせることが現実的です。

導入前に確認しておきたいこと

Expense Agentを活用するには、いくつかの前提条件があります。

まず、Dynamics 365 Business Centralの契約が必要です。Business Centralは月額ライセンスで提供されており、日本では販売代理店(マイクロソフトパートナー)経由での導入が一般的です。料金プランはEssentialsとPremiumの2段階があり、経費精算機能はEssentialsプランから利用できますが、詳細は代理店への確認が必要です。

次に、利用中のクレジットカードがデータ連携に対応しているかを確認する必要があります。カード会社によっては取引データのエクスポート形式が異なるため、Business Centralへの取込方法(CSV形式のインポートや直接連携)が会社ごとに変わる可能性があります。この点は、現在使っているカードとBusiness Centralの組み合わせで動作確認を取ることが先決です。

また、Business Centralを現在使っていない会社にとっては、この機能単体のために導入するよりも、販売管理や在庫管理など他の業務との組み合わせで費用対効果を判断した方が合理的です。経費精算だけを改善したいなら、単機能の経費精算クラウドサービスの方がコストを抑えられる場合もあります。ChatGPTの使い方ガイドでも触れているように、AIツールの導入は「何の課題を解決したいか」を先に決めることが判断の起点になります。

経理担当者の視点で見た、実務上の変化

自動化が進んでも、人が関与するポイントは残ります。カード取引のデータが自動で経費申請に変換されても、勘定科目の最終確認や不明な支出の照会は経理担当者の判断が必要です。ただし、判断の質は上がる可能性があります。転記作業に追われているときと、整理済みのデータを確認するときとでは、ミスに気づく余裕がまったく違うからです。

経費精算のプロンプトの書き方ガイドで解説しているように、AIツールへの指示や確認ルールを事前に整備しておくと、導入後の運用がスムーズになります。特に「どのカード取引を経費対象とし、どれを対象外とするか」のルールをチームで共有しておくことは、自動化の精度を高めるうえで実務的な準備になります。

まとめ

Business CentralのExpense Agentによるクレジットカード取引の自動取込は、経費精算の入力工数を実質的に削減できる可能性を持った機能です。ただし、効果が出るのは法人カードを使っている会社であり、すでにBusiness Centralを導入している、あるいは導入を検討しているという前提があります。

自社の月間経費件数と処理工数を一度試算してみて、削減できる時間と導入・運用コストが見合うかどうかを確認することが、判断の出発点になります。「まず工数を計算してみる」という一歩が、経理業務の見直しを具体的に動かすきっかけになるかもしれません。Business Centralの導入や経費精算業務のAI活用について、どこから手をつければよいか迷う場合は、専門家への相談を検討してみてください。

生成AIを、自社の業務へ。中小企業のための導入支援と社内研修。初回のご相談は無料です。

うちの会社では何ができるのか、で止まっていませんか

生成AIの情報は増えましたが、どの業務から入れるか、誰に使わせるか、社内の情報をどこまで入力してよいか。決める段階でつまずく会社は少なくありません。

AIスキルハックでは、中小企業向けに導入の進め方と社内研修のご相談を受けています。何も決まっていない段階で構いません。

初回のご相談は無料です。2営業日以内にご返信します。

AI導入・社内研修について相談する

従業員10〜100人ほどの会社からのご相談が中心です

  • URLをコピーしました!
目次