PerplexityがSpacesを刷新した新機能「Projects」を公開しました。共有ファイルシステムと継続メモリを組み合わせた「作業の拠点」として設計されており、単発の検索・質問にとどまらないAI活用の形を打ち出しています。ChatGPTやClaudeとの差別化がどこにあるのか、そして実際の業務でどう使えるのかを整理します。
Spacesから何が変わったのか

Perplexityはもともと「Spaces」という機能を持っていました。テーマごとにチャット履歴をまとめておける、いわば「フォルダ」のような存在です。ただSpacesはあくまで整理のための入れ物であり、ファイルを共有したり、前回の会話の文脈を自動で引き継いだりする機能は限定的でした。
今回のProjectsはその考え方を一段階進めています。共有ファイルシステムとは、複数のメンバーが同じプロジェクト空間にファイルをアップロードし、そのファイルをAIが参照しながら回答を生成できる仕組みです。そして継続メモリとは、前回のやり取りや登録した情報をAIが覚えたまま次の会話に臨む機能を指します。つまりProjectsは「AIに文脈を持たせたまま、チームで使い続けられる作業スペース」として設計されています。
これまでのAIツールの多くは、会話が終わるたびに記憶がリセットされるか、個人の設定にとどまるものが主流でした。Projectsはその壁を、チームレベルで崩そうとしています。
「記憶が続く」とは実務でどういう意味か
継続メモリという言葉は少し抽象的に聞こえますが、実務の場面に置き換えると分かりやすくなります。
例えば、マーケティング部門で月次の広告レポートを担当している30代の会社員を想像してください。毎月、媒体ごとのデータをExcelで集め、前月比を計算し、上司向けに所見を書く、という作業を繰り返しているとします。これまでのAIツールだと、毎回「このデータは広告費の月次推移です。前月比で見ると〜」と背景から説明し直す必要がありました。Projectsでは、プロジェクト空間にデータのフォーマットや過去のレポートをあらかじめ登録しておけば、毎回の説明が不要になります。AIが「このチームは毎月この形式でレポートを作っている」という文脈を持ったまま作業に入れるため、質問の精度も上がります。
継続メモリは「便利な機能」というより、AIを使い込むほど効果が大きくなる仕組みです。最初に文脈を整えるコストをかけておけば、2回目以降の作業が軽くなる。そういう設計になっています。
他のAIツールとの比較で見えてくること
ChatGPTにも「Projects」という機能があり、ClaudeにはProjectsに加えてファイル共有の仕組みがあります。名前が似ているため混乱しやすいのですが、各ツールの設計思想はやや異なります。
以下は主要AIツールのプロジェクト・記憶系機能を整理したものです。
| ツール | 記憶の継続 | ファイル共有 | チーム利用 | 検索との統合 |
|---|---|---|---|---|
| Perplexity Projects | ◎ | ◎ | ◎ | ◎(強み) |
| ChatGPT Projects | ◎ | ○ | △ | △ |
| Claude Projects | ◎ | ◎ | ○ | △ |
Perplexityの最大の強みは「検索との統合」にあります。ChatGPTやClaudeは基本的に学習済みの知識から回答を生成しますが、Perplexityはリアルタイムのウェブ検索を組み合わせて回答します。Projectsの文脈記憶と、最新情報を引っ張ってくる検索機能が組み合わさることで、「このプロジェクトの背景を踏まえた上で、今日の市場動向を教えて」という使い方が自然にできるようになります。
ただし、チームで本格的に使う場合はコストとプランの確認が必要です。Perplexityの有料プランであるProが前提になる機能も含まれているため、個人利用から始めて使い勝手を確かめてから、チーム展開を検討する順番が現実的です。ChatGPTの使い方ガイドでも整理しているように、AIツールは最初に「個人で試す→業務に組み込む→チームで共有する」という段階を踏むと定着しやすい傾向があります。
「作業の拠点」という考え方が広がっている背景
PerplexityがProjectsを出してきたタイミングは偶然ではありません。OpenAI、Anthropic、Googleといった主要プレイヤーが相次いで「継続的な作業を支える」機能を強化しており、AIツール全体が「一問一答から継続的な共同作業へ」というシフトを進めています。
このシフトが起きている理由の一つは、AIを使い始めた人たちが「毎回ゼロから説明するのが面倒」という壁にぶつかっているからです。使い始めの頃は何でも聞けることに感動しますが、しばらくすると「この前と同じ前提を何度も書くのが手間」という問題が出てきます。Projectsのような継続記憶機能は、まさにその摩擦を取り除くために設計されています。
AIツール各社がこの機能を競うように出してきていること自体、「使い続けてもらうための設計」が今の競争軸になっているシグナルです。単に賢い回答を返すだけでは差別化できなくなってきた、ということでもあります。
実際に試すならどこから始めるか
具体的な活用を考えるなら、まず「繰り返し発生している作業」を一つ選ぶことが出発点になります。
例えば、経理部門で毎月同じ形式の集計をしている場合、Projectsにそのフォーマットと過去の集計結果をアップロードしておきます。次回から「先月のデータと比較して異常値がないか確認して」と一言送るだけで、背景の説明なしに作業が始められます。プロンプトの書き方を工夫することで精度はさらに上がりますが、プロンプトの書き方ガイドで触れているように、最初は「何をお願いしたいか」を平易な言葉で書くだけでも十分な精度が出ます。
チームで使う場合は、最初にプロジェクト空間の「共通ルール」を決めておくことが重要です。どのファイルを共有するか、AIへの指示のスタイルをどう統一するか、といった取り決めがないと、メンバーごとに使い方がバラバラになって効果が出にくくなります。これはAIツール全般に言えることですが、Projectsのような共有環境では特に影響が大きくなります。
まとめ
PerplexityのProjectsは、AIを「使い捨ての道具」から「育てていく作業環境」に変えようとする試みです。継続メモリと共有ファイルシステムの組み合わせは、個人の業務効率化にとどまらず、チームでのAI活用を現実的な選択肢にする可能性を持っています。競合他社も同じ方向に動いている中で、Perplexityが検索統合という独自の強みをどこまで活かせるかが、今後の使い分けのポイントになってくるはずです。あなたの業務の中で「毎回同じ説明を繰り返している作業」はどこにあるか、そこから考えてみてください。

