経理業務で生成AIを使う:請求書・仕訳・メール対応の活用例と確認手順

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月末の請求書処理で深夜まで残業している、仕訳の転記ミスが後から見つかる、問い合わせメールの返信が遅れがちになる——こうした経理現場のじわじわとした消耗に、生成AIが効く場面が増えています。ただし「AIに任せれば全部解決」とはならないのが経理業務の難しいところで、数字の扱いには誤りが混ざる前提で使う必要があります。この記事では、中小企業の経理担当者が生成AIをどこに使えるか、何を人が確認するかをセットで整理します。

経理業務での生成AI活用例
目次

生成AIを経理に使う前に押さえておくこと

生成AI(ChatGPTやClaude、Geminiなど、質問や指示を入力すると文章・表・計算ロジックを返してくれるAIツールの総称)は、文章の整理や定型作業の下書きには向いていますが、数値の正確性をAI単体で保証することはできません。計算式の考え方や項目の整理は得意でも、入力した数字そのものを「検算」する機能はなく、桁を間違えたままそれらしく出力することがあります。これは現在のAI全般の特性であり、経理業務で使う際に最初に頭に入れておくべき前提です。

つまり、生成AIの使い所は「作業の下書きや補助」であり、最終的な数値確認・承認は必ず人が行う設計にする必要があります。これを前提にすると、経理のどこに使えるかが具体的に見えてきます。ChatGPTを例に挙げると、無料プランでも試せますが、業務で使う場合はデータの学習利用をオフにする設定や、有料プランの利用が推奨されます(ChatGPT Plusは月額3,000円前後)。社内の機密情報や取引先の個人情報を入力する際は、社内ルールを先に整備しておくことが前提になります。

請求書の内容確認:目視チェックの補助として使う

取引先から届いた請求書を確認する作業は、件数が増えると見落としが起きやすくなります。金額・税区分・振込先の変更・支払期日——確認項目は毎回同じでも、数十枚あると集中力が続かないのが実情です。生成AIは、このチェック作業の「抜け漏れ予防」に使えます。

具体的な使い方としては、請求書のテキスト内容をコピーしてAIに貼り付け、「以下の請求書から、金額・税率・振込先・支払期日を抜き出してください」と指示する方法があります。PDFをそのまま読み込める環境(ChatGPT PlusのGPT-4o等)であれば、画像から文字を読み取って項目を整理することも可能です。AIが出力した一覧と原本を突き合わせることで、確認の精度が上がります。

ただし、AIが読み取った数字は必ず原本と照合することが欠かせません。OCR(画像から文字を読み取る技術)には誤読が起きることがあり、「8」が「3」に、「1,000,000」が「100,000」になってケースもあります。従業員15人の製造業の経理担当者が月30〜40枚の請求書を処理している場合、AIで一覧化→原本照合というフローにするだけで、確認漏れの防止と処理速度の改善が同時に見込めます。AIを「最終判断者」ではなく「一覧を作ってくれるアシスタント」として使うのがポイントです。

仕訳の下書き:勘定科目の候補出しに絞って活用する

経理担当者が日々判断を迫られるのが勘定科目の選択です。「交際費か会議費か」「修繕費か資本的支出か」——判断に迷う取引が月に何件も出てくる会社は少なくありません。生成AIは、こうした判断の「たたき台」を出す用途に使えます。

使い方は、取引の内容をAIに説明して勘定科目の候補を出してもらうものです。「取引先との会食、1人あたり5,000円、4人、商談目的。適切な勘定科目と判断根拠を教えてください」のように、条件を具体的に入力するほど精度が上がります。AIは「交際費(得意先接待として計上。ただし資本金1億円以下の中小企業であれば交際費の一定額まで損金算入可)」のように、判断根拠と注意点をセットで返してくれます。

注意が必要なのは、税法の解釈が変わっている場合や、会社固有のルール(「社内ではこの取引は○○で処理している」等)はAIが知らない点です。AIの出力はあくまで一般的な判断基準に基づく候補であり、最終的な仕訳は自社の処理方針と担当者の判断で確定させます。税務上の判断に迷う取引については、税理士への確認を経るルールにしておくと安全です。なお、プロンプト(AIへの指示文)の書き方を工夫すると、出力の精度が変わります。指示の書き方については生成AI研修のカリキュラムで扱われる内容が参考になります。

Excelの整理と集計:式の考え方を聞く使い方が現実的

Excelで複雑な集計をしたいけれど、関数をどう組めばいいかわからない——こうした場面で生成AIは即戦力になります。「VLOOKUP」と「XLOOKUP」の違いを聞く、ピボットテーブルの設定手順を教えてもらう、特定のSUMIFS式を書いてもらう、といった使い方は業種や規模を問わず使いやすいです。

たとえば、従業員20人規模の卸売業の経理担当が「複数のExcelファイルから月ごとの売上を集計して部門別に並べたい」という作業をしたい場合、必要な関数の組み合わせをAIに説明してもらいながら自分で作る、またはAIが出力したサンプル式を自社のファイルに合わせて修正する、という使い方が実際的です。AIに「マクロ(Excelの自動処理プログラム)を書いてほしい」と頼むことも可能ですが、動作確認は必ず行い、重要なファイルで使う前にバックアップを取る習慣を合わせてつけておきます。

Excelの数値自体をAIに入力して「この表のミスを見つけて」と依頼することも試みる方がいますが、大量の数値をAIが正確に検証するのは現状の技術では限界があります。数値のチェックは既存の検算式やExcel上での突き合わせで行い、AIは「何をどう集計するか」のロジックを考える段階に使うのが現実的な分業です。

問い合わせメールの下書き:定型文の生産を任せる

経理担当者が意外に時間を取られるのが、取引先や他部門へのメール対応です。「支払いが遅れる旨の連絡」「請求書の再送依頼」「税率の確認依頼」——内容は繰り返されるのに、毎回一から書いています。生成AIは、こうした定型メールの下書き生成に向いています。

使い方は明快です。「取引先への支払い遅延のお詫びメールを書いてください。理由は社内確認に時間がかかっているため。支払い予定日は今月末。丁寧なビジネス文体で」と指示するだけで、そのまま送れる水準の文章が出てきます。下書きを自分でゼロから書く時間と、AIの出力を確認・修正する時間では、後者の方が明らかに短くなるケースが多いです。

注意点は、取引先名・金額・日付といった固有情報はAIが埋めてくれないか、または間違った情報を入れてくることがある点です。下書きを使う前に、固有情報が正しいかを必ず確認します。また、先方から受け取ったメールの内容をAIにそのまま貼り付ける場合は、社内のセキュリティポリシーを確認してから使います。特に個人名や取引金額が含まれる場合、外部のAIサービスに入力してよいかの判断は会社のルールに従います。

メールの文体調整も得意で、「もう少し柔らかい表現に直して」「箇条書きを使った読みやすい形に変えて」といった追加指示にも対応します。定型メールをあらかじめAIで複数パターン作っておき、テンプレートとして保存しておくという使い方も、繁忙期には効果が出やすいです。

生成AIを経理で使うときの確認ルール:何を人が持つか

ここまで挙げた活用場面を整理すると、生成AIに任せてよい作業と、人が確認・判断する作業の切り分けが見えてきます。

生成AIが担える作業は、項目の一覧化・下書き生成・関数の提案・文章の整理といった「形にする」段階です。一方、数値の最終確認・勘定科目の確定・メールの送信判断・税法上の判断といった「正誤と責任が伴う」部分は人が持ちます。この切り分けは曖昧にしないほうがよく、チームで使う場合は「AIの出力をそのまま使わない」「必ず担当者が内容を確認してから次のステップへ進む」という運用ルールを最初に決めておくことが、ミスを防ぐうえで実際に効きます。

経理担当が1〜2名の会社では、AIの出力確認も同じ人が行うことになるため、「AIが作ったから大丈夫」という心理的な確認スキップが起きやすくなります。これを防ぐために、AIを使って処理したものには「AI下書き→本人確認済み」のような簡単なフラグを社内フローに組み込む方法が有効です。小さな工夫ですが、習慣として定着させると確認漏れが減ります。

まとめにかえて:「任せる範囲」を決めることが先

生成AIは、経理業務の全部を自動化するツールではありません。むしろ、繰り返しの整理作業や文章の下書き、判断のたたき台を出す部分で手を貸してくれる存在として使うと、担当者の負荷が減り、本来集中すべき確認・判断の精度が上がります。

何より先に決めるべきなのは、自社のどの作業にAIを使うか、そして何を人が確認するかというルールです。ルールのないまま使い始めると、便利な反面、ミスの温床にもなりかねません。まず一つの作業(たとえばメールの下書き)だけ試してみて、チームで確認の流れを作ることから始めると、無理なく定着していきます。

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生成AIの情報は増えましたが、どの業務から入れるか、誰に使わせるか、社内の情報をどこまで入力してよいか。決める段階でつまずく会社は少なくありません。

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