生成AI研修のカリキュラム例:助成金要件を満たす10時間の設計

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研修会社と打ち合わせを始めたものの、「10時間ってどう組めばいいの?」と手が止まっている担当者は少なくありません。人材開発支援助成金のリスキリング支援コースでは、OFF-JT(通常業務から離れた研修)を合計10時間以上行うことが要件の一つです。時間数さえ満たせば何でもいいわけではなく、内容の作り方で助成の可否が変わります。この記事では、時間要件を満たしながら現場に定着しやすいカリキュラムの組み方を、具体的な時間配分とともに整理します。

生成AI研修のカリキュラム例:助成金要件を満たす10時間の設計
目次

「10時間」の前提を確認する

人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースは、中小企業が社員に生成AI研修を受けさせるときに活用しやすい制度です。経費の75%が助成され、1人あたりの上限は訓練時間100時間未満で30万円、これに加えて研修中の賃金助成として1人1時間あたり1,000円が付きます。計画届は訓練開始の6か月前から1か月前までに都道府県労働局へ提出する必要があるため、研修会社との打ち合わせは早めに動くことが前提になります。

10時間という数字は「最低ライン」であり、下回ると要件を満たせません。一方で、20時間・30時間と伸ばすほど助成額が増えるかというと、1人あたり上限30万円の枠の中で変わってくる話になります。多くの中小企業が最初に設計するのは「10〜12時間の2回構成」で、これが費用対効果と現場負担のバランスが取りやすい規模感です。

もう一点、eラーニングで実施する場合は賃金助成が付かず、経費助成のみで上限も15万円に下がります。令和8年8月3日以降に計画届を出す場合は、さらに1人につき年1回の制限がかかります。自社のカリキュラムを集合研修型で設計するか、eラーニング型で設計するかによって、助成の構造が変わってくるため、研修会社と相談する前に自社がどちらを想定しているかを決めておくと話が早く進みます。

2回構成を選ぶ理由

生成AI研修を1日(たとえば8時間)で完結させようとすると、インプットが詰め込みになりやすく、翌週には半分忘れています。これは生成AIに限らず研修全般に言えることですが、生成AIは特に「自分の業務で使ってみないと実感がつかめない」性質があります。1日研修で基礎と演習を終えたあと、2〜4週間の実践期間を挟み、フォロー研修で疑問点を解消するという流れにすると、学んだことが業務に定着しやすくなります。

時間配分の目安として、「第1回:7〜8時間 + 第2回:3〜4時間 = 合計10〜12時間」という構成を取る企業が多いです。第1回で基礎と実践演習を固め、実践期間で各自が自分の業務に当てはめて試し、第2回でその経験を持ち寄って深掘りするという流れです。研修会社によっては「復習セッション」として半日プログラムを設定しているところもあります。

この構成を研修会社に提案するときは、「助成金の要件を満たす時間数にしたい」という話と同時に、「2回目は実践後の疑問解消を主目的にしたい」と伝えると、プログラムの設計がスムーズに進みます。

第1回(7〜8時間)の時間配分と内容

第1回は、生成AIをほとんど使ったことがない社員でも置いていかれない設計にする必要があります。以下は1日7時間30分のプログラム例です。実際の時間割は研修会社と相談しながら調整してください。

午前:基礎理解と安全な使い方(3時間)

生成AIとは何かを1文で言えるようにする説明から始め、「なぜ間違えるのか」「どんな情報を入れてはいけないのか」を扱います。中小企業の現場でよく起きるのが、社内の顧客情報や個人名をそのままAIツールに貼り付けてしまうミスです。情報管理のルールは最初に扱っておかないと、午後の演習で同じことが起きます。

生成AIの仕組みを技術的に掘り下げる必要はありません。「確率的に次の言葉を予測する仕組みだから、正しそうに見えても間違いが含まれる」という理解と、「入れていい情報・いけない情報の判断基準」があれば、現場では十分使えます。ここに1時間以上かけるかどうかは、参加者のITリテラシーによって変わります。

午後前半:プロンプトの書き方と業務別演習(3時間)

ここが研修の核心部分です。プロンプト(AIへの指示文)の書き方は、役割・背景・条件・出力形式の4点を意識するだけで結果が大きく変わります。当メディアのプロンプト設計ガイドで基本構造を確認しておくと、研修会社への発注内容を整理するときの参考になります。

演習素材は「架空の業務資料」ではなく、自社の実際の文書を使うことを強く推奨します。会議の議事録、見積もり依頼のメール文、クレーム対応のひな形、採用募集の文章など、日常業務で扱っている文書をサンプルとして持ち込むと、「これが自社に使える」という実感が演習中に生まれます。ただし、顧客名や個人情報は必ず除外した状態で持ち込む必要があります。この作業は研修前に担当者が準備しておく必要があるため、研修会社に素材の持ち込みが可能かどうかを確認しておきましょう。

業種ごとに使いやすい用途は異なります。製造業なら作業手順書のドラフト作成、小売業なら商品説明文やSNS投稿の作成、士業なら契約書や説明文書の初稿起こし、といった形で業務に紐付けた演習を設計してもらうと、研修後に「あの操作、何に使えばいいんだっけ」という状態になりにくくなります。

午後後半:実践期間の使い方と質疑(1時間30分)

第1回の締めは、次の2〜4週間で社員が自分の業務に試してみるための準備です。どのツールを業務で使っていいか、何を記録しておけば第2回で話し合えるか、困ったときに社内で誰に相談するかを確認します。研修で教わったことをすぐ使える状況を整えておかないと、実践期間が「ただの空白期間」になってしまいます。

第2回(3〜4時間)の組み方

実践期間を経た第2回は、「うまくいかなかった話」を持ち寄ることが目的の中心になります。「こういうプロンプトを書いたら変な回答が来た」「この業務には使えないと思った」という失敗の共有が、チーム全体の理解を底上げします。講師が正解を教える場というより、参加者が経験を持ち寄って整理する場として設計するほうが、この回の効果は上がります。

時間配分の一例は次の通りです。

実践報告と全体共有に1時間、業務別の改善演習に1時間30分、社内ルール・運用フローの確認に30分、全体の質疑と振り返りに30分。合計で3時間30分前後になります。

社内ルールの確認は第2回に置くのが適切です。第1回の時点ではまだ「使ってみていない状態」なので、ルールを説明されても実感が伴いません。2〜4週間の試行を経て「こういうときはどこまでやっていいの?」という疑問が出たタイミングで整理すると、ルールが自分ごととして受け取られやすくなります。

助成対象にならない内容をどう除外するか

研修の内容設計で注意が必要なのは、助成対象にならない内容が混じらないようにすることです。リスキリング支援コースでは、パソコンの初歩操作だけの内容、購入したシステムの操作説明だけの研修、コンサルタントによる指導は対象外とされています。

たとえば、「ChatGPT(チャットGPT:テキストを入力すると回答を返してくれる生成AIサービスの一つ)の画面の使い方を説明するだけ」という内容は、ツールの操作説明に近いと判断される可能性があります。一方、「ChatGPTを使って自社の業務課題を解決するプロンプトを設計する演習」は、スキル習得を目的とした研修として評価されやすくなります。

また、外部のコンサルタントが「うちの会社ではこうやっています」という事例を紹介するだけのセッションも、指導型と見なされる場合があります。研修会社に依頼するときは、「技術・スキルの習得を目的とした内容」であることを設計段階で確認しておくことが重要です。

研修会社によっては、助成金申請を見据えたカリキュラムの設計に慣れているところとそうでないところがあります。打ち合わせの際に「助成金の要件を満たすカリキュラム設計の実績があるか」を明示的に確認しておくと、後からカリキュラムを作り直すリスクを減らせます。

生成AI研修の費用相場や助成金制度全体の仕組みについては、生成AI研修の費用と助成金を整理した記事で制度ごとの比較を確認できます。研修会社への見積もりを取る前に、費用感と助成の構造を把握しておくと、打ち合わせの精度が上がります。

研修会社との打ち合わせで確認すべきこと

担当者が研修会社に問い合わせる前に手元に用意しておくと話が進みやすい情報は、対象者の人数・職種・現在のITスキルレベル、研修を行う時期と形式(集合か、eラーニングか)、自社で持ち込める業務資料の種類、助成金の申請を自社で行うか研修会社にサポートしてもらうかの方針、の4点です。

対象者が「営業3人と事務2人の計5人」のような少人数の場合、公開講座を活用するほうが費用が抑えられることもあります。公開講座では自社の業務資料を演習に使えない場合もあるため、「業務に即した演習」を優先するなら社内向けのカスタム研修を選ぶほうが適切です。どちらが向いているかは、参加人数と研修予算のバランスで判断することになります。

社内準備として、職業能力開発推進者の選任と事業内職業開発計画の整備も助成金申請の要件に含まれます。研修会社が申請サポートをしている場合でも、この社内整備は企業側で行う必要があるため、担当者が早めに人事・総務部門と連携しておくことが必要です。

まとめ

10時間のカリキュラムは「1日でまとめて終わらせる」より、「第1回で基礎と演習→実践期間→第2回でフォロー」という流れで設計すると、研修後に現場で使われる確率が上がります。助成の要件を満たしながら、自社の業務に紐付いた演習を組み込めるかどうかが、研修会社を選ぶときの判断軸になります。リスキリング支援コースは令和8年度末までの時限措置であり、後継の制度では助成率が下がります。動けるうちに計画届の準備を始めることが、この制度を最大限活用する条件です。

本記事の制度情報は2026年8月30日に厚生労働省・都道府県労働局の公募要領で確認したものです。申請前に最新の公募要領をご確認ください。

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