何が変わったのか

2026年10月から、Google Workspace(グーグルの法人向けグループウェアサービス)のアカウント管理ルールが変わりました。変更の対象は「二次カレンダー」と呼ばれる機能で、ユーザーが自分のメインカレンダーとは別に作れる追加のカレンダーです。たとえば「部門の会議スケジュール」「プロジェクト専用の日程管理」「外部顧客との打ち合わせ記録」といった用途で、メインカレンダーと分けて作られることが多いものです。
これまでは、退職者のユーザーアカウントを管理者が削除しても、その人が作った二次カレンダーは一定期間残る仕様でした。つまり、アカウントが消えた後でも共有カレンダーとして他のメンバーが参照できるケースがあったわけです。今回の変更でその挙動が変わり、ユーザーアカウントを削除すると、そのユーザーが所有する二次カレンダーも一緒に削除されるようになりました。個人アカウントのGoogleカレンダーではなく、会社が契約しているWorkspaceの法人アカウントが対象です。
この変更は、Googleが2026年初頭に予告していたものが今月から実際にロールアウトされている状況です。予告を見ていなかった会社にとっては、退職者のアカウントを削除した翌日に「あのカレンダー、消えた」という事態が起きる可能性があります。
どういう場面で問題になるか
実際に影響が出やすい場面を具体的に考えてみます。
従業員20人ほどの製造業で、総務担当が1人で退職者のアカウント削除を担っているケースを想定してください。Aさんが先月退職し、総務担当者は手順書に従ってAさんのアカウントを削除しました。ところが翌週、営業チームから「Aさんが管理していた得意先訪問スケジュールのカレンダーが見えなくなった」という連絡が入ります。Aさんはメインカレンダーとは別に「○○商事 担当スケジュール」という二次カレンダーを作り、営業チーム全員に共有していたのですが、アカウントごと消えてしまっていたという状況です。
別のパターンとして、10人規模のサービス業で、前任者が作った「シフト管理カレンダー」を現場スタッフが長年参照しているケースもあります。前任者が数年前に退職した際にアカウントを削除済みだった場合、今回の変更がいつ適用されるかによっては突然見えなくなるリスクがあります。もっとも、この仕様変更は「今後削除するアカウント」に適用されるものですが、運用の穴として認識しておく価値はあります。
問題が起きやすい二次カレンダーのパターンをまとめると、以下のようなものが挙げられます。
- チームや部門全体に共有されているスケジュール管理カレンダー
- 顧客ごと・プロジェクトごとに作られた担当者管理のカレンダー
- 会議室や備品の予約カレンダー(退職者が作成者になっている場合)
- 定期イベントの管理(月次会議、棚卸し日程など)
いずれも「アカウントが消えたら一緒に消える」という前提で管理する必要があります。
退職者アカウント削除前の確認フロー
ここで、退職者アカウントを削除する前に確認すべき事項を整理します。総務担当や情シス担当がそのまま使えるよう、カレンダーだけでなくドライブやメールも含めた引き継ぎ確認の流れとして示します。
退職者アカウント削除前チェック(Google Workspace向け)
| 確認項目 | 確認方法 | 対応内容 |
|---|---|---|
| 二次カレンダーの有無 | 管理コンソール or 退職者カレンダー設定 | 引き継ぎ先に所有者を変更 |
| 他メンバーと共有中のカレンダーか | カレンダーの「共有設定」を確認 | 共有中なら移行を優先 |
| Google ドライブのファイル | 管理コンソール「データのエクスポート」 | 後任者へ所有権を移転 |
| メールの転送・バックアップ | 管理コンソールのメール設定 | 転送先設定またはアーカイブ |
| 外部サービスとの連携アカウント | Slack、Zoom等の登録確認 | 別アカウントへ移行 |
二次カレンダーの所有者変更は、Google Workspaceの管理コンソール(管理者専用の設定画面)から操作できます。管理者権限を持つ担当者であれば、退職者のカレンダーを別ユーザーに移管する処理が可能です。ただし、この操作はアカウントを削除する前に行う必要があります。削除後は復元が難しくなります。
もし今の時点で「どのカレンダーが誰に共有されているか把握できていない」という状態であれば、まず管理コンソールのカレンダー設定を一度確認するところから始めるのが現実的です。
中小企業で見落とされがちな理由
この種の変更が中小企業で見落とされやすいのには、構造的な理由があります。大企業では情シス部門が専任でWorkspaceを管理しており、Googleからの更新通知を定期的に確認する担当者が決まっています。一方、従業員30〜50人規模の会社では、総務担当が片手間でアカウント管理を担っているケースが多く、Googleの管理コンソールに毎週ログインしているわけではありません。
さらに、二次カレンダーというのは使う人が独自に増やせる機能なので、「誰がどんなカレンダーを作って共有しているか」を組織として把握できていないことがほとんどです。メインカレンダーだけを意識していると、退職時に「ドライブのファイルは引き継いだ、メールも転送した」と一通り対応したつもりになっても、カレンダーが抜けてしまうことがあります。
Google Workspaceに限らず、業務データの引き継ぎ手順を文書化していない会社は、退職者が出るたびに対応が属人的になります。ChatGPTを使って社内マニュアルの下書きを作る方法なども参考にしながら、引き継ぎ手順を一度テキストで整備しておくと、次の退職者が出たときに慌てずに済みます。
Workspaceを使っていない会社への参考情報
この記事はGoogle Workspaceを業務で使っている会社を前提に書いていますが、「まだ全社的には使っていないが、一部のメンバーがGoogleカレンダーを共有している」という状況の会社も少なくありません。
その場合、個人のGoogleアカウント(@gmail.com)で共有しているカレンダーは、今回の変更の対象外です。今回変わったのは、会社として契約しているWorkspaceアカウント(@会社名.com のような独自ドメインのアカウント)に限った話です。ただし、個人アカウントで業務カレンダーを共有している状態は、退職時の引き継ぎという観点で別の問題をはらんでいます。退職者がアカウントを自分で管理しているため、共有解除や削除を会社側でコントロールできないからです。
Google Workspaceは1ユーザーあたり月額数百円〜で契約でき、管理コンソールから全ユーザーのデータを一元管理できます。退職者対応を繰り返す中で「その都度バタバタする」という状況が続いているなら、組織アカウントへの移行を検討する時期かもしれません。社内のAIツール活用や業務効率化を進める際の基盤整備として、プロンプトの書き方ガイドと合わせて、まずツール環境を整えることが遠回りのようで近道になります。
まとめ
今回のGoogle Workspaceの変更は、「退職者のアカウントを削除したらカレンダーも消える」というシンプルな仕様変更ですが、二次カレンダーを共有資産として使っていた場合に気づかず消してしまうリスクがあります。対応として必要なのは、退職者アカウントを削除する前に二次カレンダーの所有権を別のユーザーに移す、それだけです。ただし、そのためには「誰がどんな二次カレンダーを持っているか」を事前に把握する仕組みが必要です。
退職者が出るタイミングで慌てるのではなく、次の退職者対応が来る前に、管理コンソールで現在の状態を一度確認してみてください。もし「Workspaceの管理をどう整備すればいいかわからない」という状況であれば、専門家への相談も選択肢のひとつです。
Google Workspaceの管理設定や退職者対応の手順でお困りの場合は、[お問い合わせフォーム]からご相談ください。


