Google Apps Scriptがデータ保存地域に対応——コンプライアンスが気になる中小企業も業務自動化を進めやすくなった

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この記事で整理すること

記事内図解

Google Workspaceの業務自動化ツール「Google Apps Script」が、データの保存場所を地域単位でコントロールできる「データ保存地域」機能に正式対応しました。技術的な話に聞こえますが、これは「データがアメリカのサーバーに置かれることを懸念して、自動化の導入をためらっていた企業」にとって直接関係する変化です。この記事では、何が変わったのか、どんな会社に影響があるのか、そして実際に導入を検討する前に確認すべきことを整理します。

そもそも「Apps Script」と「データ保存地域」とは

Google Apps Script(アップス・スクリプト)は、GmailやGoogleスプレッドシート、GoogleカレンダーといったGoogle Workspaceのアプリを自動で操作できるツールです。プログラムを書くと、たとえば「毎月末にスプレッドシートの売上データを集計してメールで送る」「フォームの回答内容に応じて自動で担当者に振り分ける」といった処理を、人の手を借りずに動かせるようになります。専門的なエンジニアがいなくても、比較的シンプルな記述で業務の一部を自動化できる点が特徴です。

一方、「データ保存地域(Data Regions)」は、Google Workspaceのデータが物理的にどこのサーバーに保存されるかを指定する機能です。通常、クラウドサービスのデータは世界中の複数のデータセンターに分散して保存されます。どこに置かれるかはユーザー側からは見えません。この機能を使うと、データの保存・処理場所を「米国」または「欧州」に絞り込めます。日本を含むアジアへの限定指定は現時点で選択肢にありませんが、米国・欧州のどちらかに固定することで「どこにデータがあるか分からない」という状態を解消できます。

何が変わったのか

これまで、データ保存地域の設定はGmailやGoogleドライブ、Googleドキュメントなど主要なWorkspaceアプリに適用できていました。ただしApps Scriptは対象外でした。スクリプトの実行ログや変数として扱うデータ、スクリプト自体のコードがどこで処理されるかを指定できなかったため、「Workspaceは保存地域を設定したのに、自動化の部分だけ管理外になってしまう」という穴が残っていました。

今回の対応で、Apps Scriptで動くスクリプトのデータや実行処理も、指定した地域内にとどまるよう管理できるようになりました。Workspaceの設定として一元的にコントロールできる範囲が広がり、自動化ワークフローもコンプライアンス管理の対象に含められるようになったということです。

どんな会社に関係するのか

率直に言うと、すべての中小企業に今すぐ必須の変化ではありません。一方で、以下のような状況に当てはまる場合は確認する価値があります。

  • 取り扱う情報に個人情報・医療情報・金融情報が含まれており、社内または取引先からデータの保管場所について問い合わせを受けたことがある
  • 官公庁や地方自治体、上場企業と取引があり、情報セキュリティに関する書類の提出を求められた経験がある
  • GDPR(欧州の個人情報保護規則)の適用対象になりうる欧州の顧客・取引先がいる
  • ISO27001やプライバシーマークの取得・維持のために、データの保管場所を記録・説明する義務がある

従業員20人の医療関連サービス会社を例に考えてみます。患者のスケジュール情報をGoogleフォームで受け付け、Apps Scriptで自動的にスプレッドシートに整理して担当者に通知する、という流れを使っているとします。これまでは「Workspaceの主要データは地域指定しているが、スクリプトの実行部分はどこで処理されているか説明できない」という状態でした。今後はスクリプトの動作も含めて「米国の指定サーバーで処理されている」と説明できるようになります。取引先や審査機関への説明資料に具体的な根拠を書けるようになるという、地味ながら実務上の差は大きい変化です。

設定に必要なプランと前提条件

データ保存地域の機能は、すべてのGoogle Workspaceプランで使えるわけではありません。以下の表で、対応状況を整理しました。

プラン データ保存地域の設定
Business Starter 対象外
Business Standard 対象外
Business Plus 対象外
Enterprise Standard 利用可能
Enterprise Plus 利用可能
Frontline Standard 利用可能
Education Plus 利用可能

(参考:Google Workspaceの公式ドキュメントより。プランの詳細は変更される場合があります)

Business系の一般的なプランには含まれていない点が重要です。コンプライアンス要件への対応を目的にデータ保存地域を使いたい場合、Enterpriseプランへのアップグレードが前提になります。費用は契約規模・ユーザー数によって異なるため、Google Workspaceの販売代理店またはGoogleのセールスチームへの問い合わせが必要です。

また、データ保存地域の設定は管理コンソールからGoogle Workspaceの管理者が行います。設定後、Apps Scriptを含む対象サービスのデータが指定地域内に移行されますが、移行完了には時間がかかる場合があります。設定を変更した時点でデータが即座に移動するわけではないため、コンプライアンス上の期限がある場合は早めに動くことが望ましいです。

「自動化を使いたかったが止まっていた」会社への影響

Google Workspace上での業務自動化に関心はあっても、データの取り扱いに不安があって踏み切れなかった会社にとって、この対応は検討を再開するきっかけになります。ただ、「対応した」という事実だけで判断するのではなく、自社のコンプライアンス要件がEnterpriseプランへの移行コストに見合うかを検討する必要があります。

営業5人の人材紹介会社で、候補者情報をスプレッドシートで管理しているケースを考えてみます。採用担当者からの連絡をGmailで受け取り、Apps Scriptで候補者リストに自動追記してチームに共有する、という仕組みは技術的には今すぐでも作れます。ただ、個人情報保護法の観点から「個人情報がどこのサーバーにあるか」を明示できなければ社内手続きが通らない、という状況であれば、今回の機能対応が意思決定のカギになります。Enterpriseプランの費用が年間でどの程度になるかを試算したうえで、自動化によって削減できる作業時間・工数と比較するのが現実的な判断軸です。

業務自動化の具体的な仕組みを検討するうえでは、Google Apps Scriptの基本的な使い方を解説したガイド(ChatGPTを使った自動化の文脈も含む)も参考になります。どんな操作が自動化できるか、どの程度の記述量が必要かをイメージするのに役立ちます。

また、自動化の指示文(プロンプト)をどう書くかについては、プロンプトの書き方ガイドで基本的な考え方を整理しています。スクリプトの動作を定義する際にも、「何をどういう条件でどう動かすか」を言語化する力は共通して使えます。

まとめ

Google Apps Scriptのデータ保存地域対応は、「業務自動化をコンプライアンスの枠内に収める」という、これまで難しかった課題への一つの答えです。ただし利用できるのはEnterpriseプラン以上に限られており、すべての中小企業に関係する話ではありません。自社が個人情報・機密情報を扱う業種・取引環境にあり、データの保存場所について説明責任を求められる立場にある場合は、プランの確認と費用対効果の試算を法務・管理部門で行うタイミングに来ています。コンプライアンス要件とシステムの実態のギャップを埋める手段が一つ増えた、という見方が実態に近いです。

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