3日の作業が3時間に。イベント会社がChatGPTで在庫サイトを15分で作った話

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この事例が珍しくない理由

記事内図解

ATV Big Air Tour というアメリカのモータースポーツイベント会社が、ChatGPT(OpenAIが提供する対話型AIサービス)を業務に組み込んで、マーケティングや商品管理にかかっていた時間を大幅に短縮したことを公表しました。なかでも注目されているのが、商品写真を撮影した後の在庫サイト作成を ChatGPT に任せたところ、15分で完成したという話です。それ以前は同じ作業に何時間もかかっていたとされており、全体として「3日かかっていた作業が3時間に収まるようになった」という変化が生まれています。

ただ、この事例が特別なのかというと、むしろ逆です。従業員数十人規模のイベント会社が、特別なエンジニアを雇わず、既存スタッフの作業フローを変えることで実現している点が重要で、これは国内の中小企業でも再現しやすい構造になっています。何かシステムを新たに構築したわけでも、外部委託を増やしたわけでもありません。作業の「段取り」をAIに渡しただけです。この記事では、その段取りの中身と、どんな業種・規模の会社なら同じ発想を活かせるかを整理します。

何をどう変えたのか

ATV Big Air Tour が変えた作業は大きく3種類あります。マーケティングコンテンツの作成、グッズ販売の商品ページ構築、そして在庫情報の更新です。このうち最も劇的な変化を見せたのが、商品写真から在庫ページを作るフローでした。

それまでの流れを想像すると、撮影した写真をフォルダ整理し、商品名・価格・在庫数を手入力し、ECページのテキストを書いて、レイアウトを整えて、という作業が積み重なっていたはずです。これを ChatGPT に写真と商品情報を渡しながら指示することで、ページ構成の下書きからテキスト一式までを一気に出力させるように変えました。15分という数字は、そのフローが定着した後の所要時間です。

マーケティングの部分では、イベントの告知文やSNS投稿、販促コピーの作成を ChatGPT に担わせています。毎回ゼロから書くのではなく、過去のテキストや商品情報を入力として渡し、用途に合った文章を出力させるかたちです。書き手の負荷を下げながら、アウトプットの量を増やすことができています。

中小企業の人件費で試算すると

「3日が3時間」という変化は感覚的にはわかりやすいですが、コストとして見るとどうなるかを整理します。日本の中小企業における事務・マーケ担当者の平均的な時給相当額(社保込みで換算した実態値)は1,800〜2,500円程度とされています。下表は、この範囲で削減時間を試算したものです。

削減時間 時給1,800円換算 時給2,500円換算
1回あたり(3日→3時間) 約36,000円 約50,000円
月4回の業務なら 約144,000円/月 約200,000円/月
年間に換算すると 約170万円/年 約240万円/年

ここでいう「3日」は1日8時間労働として計算し、削減できる時間を21時間(24時間→3時間)と仮定しています。もちろん ChatGPT の有料プラン(個人向けは月2,000〜3,000円程度、法人向けは従業員数に応じて異なります)や習熟にかかる時間は差し引く必要がありますが、それを考慮しても収支は合いやすい数字です。

在庫ページ作成やマーケティングコピーの作業が「月に何度も発生する」会社にとって、この試算は現実的な参考値になります。逆に、こうした作業が年に1〜2回しかない場合は、習熟コストが先行してしまうため、費用対効果は変わってきます。

「うちには関係ない」と思う前に確認したい業種の条件

ATV Big Air Tour はイベント会社ですが、この事例が参考になる国内の業種は意外と広いです。共通しているのは、「定期的に商品や情報が更新され、それをWebや印刷物に反映する作業が発生している」という条件です。

例えば、従業員15人ほどのアパレル卸業者が、季節ごとの新商品を自社ECサイトに追加する作業を毎回外注していたとします。撮影した商品写真と仕様書を渡して、商品ページを作ってもらう。この作業を ChatGPT に任せることで、外注費を削りつつ、スピードも上げることができます。実際にChatGPTの基本的な使い方ガイドで触れているように、テキスト生成だけでなく、入力した情報を整形してHTML形式で出力させることも難しくありません。

あるいは、スタッフ20人の地域イベント運営会社が、毎回のイベント後に告知用SNS投稿・プレスリリース・次回集客メールを3種類同時に作るケース。これも ChatGPT にイベントの概要と写真キャプションを渡し、媒体別に文章を出力させる使い方で対応できます。

一方で、作業の内容が都度まったく異なる受注制作業や、個人の判断が強く入る法律・医療関係の文書作成は、そのまま任せるのが難しいケースも多いです。「作業パターンが繰り返される」「出力を担当者がチェックできる」という2点が揃っているかどうかが、導入判断の分かれ目になります。

在庫ページを15分で作る、具体的な段取り

実際に商品写真から在庫ページを作るフローを試してみる場合、準備が必要なのは大きく2つです。まずChatGPTへのアクセス環境(無料版でも試すことはできますが、文章の品質や作業量を考えると月額プランの利用が現実的です)、そして商品情報のまとめ方です。

商品情報は、最初からきれいに整理する必要はありません。「商品名、サイズ展開、価格、在庫数、素材や特徴のメモ」を箇条書きにしてChatGPTに渡し、「ECサイトの商品ページ用に、お客様向けの説明文を書いてください」と指示するだけで下書きが出てきます。プロンプト(ChatGPTへの指示文)の書き方は最初の数回で慣れますが、「どんな顧客に向けた商品か」「どんなトーンで書いてほしいか」を一言添えると出力の精度が上がります。この指示文の工夫については、プロンプトの書き方ガイドが参考になります。

この作業を「今週1回だけ試す」ことをイメージするなら、既存の商品1点を選び、情報をメモ書きしてChatGPTに貼り付けてみるところから始まります。15分で完成品が出るかどうかは最初からわかりませんが、ゼロから書くより早いかどうかは1回で判断できます。

まとめ

「3日が3時間になった」という変化は、大企業が数千万円かけてシステムを入れた話ではありません。定型化できる作業を、担当者が自分でAIに渡すフローに変えただけです。在庫ページの作成、販促コピーの下書き、SNS投稿の量産、こうした作業は国内の中小企業にも普通に存在していて、同じ発想で時間を削れる可能性があります。試算した通り、月に数回繰り返す業務であれば年間で見たコスト差は小さくありません。自社の担当者が「毎回同じような作業をしている」と感じている場面が、どこにあるかを探してみることが最初の一歩になります。

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